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労働生産性の計算式・定義・種類・計算方法をわかりやすく解説
労働生産性は、従業員の人数や労働時間に対して、どれだけの成果や価値を生み出せたかを表す指標です。ただし、成果の考え方や計算方法を間違えると、実態と異なる判断につながることもあります。 この記事では、労働生産性の定義から基 […]
目次
2026年9月、日本の長期金利が約30年ぶりに3%を超えました。
さらに、新発10年国債の利回りが3%台に乗るのは、1996年以来のことです。
長期金利と関連して必ず取り上げられるのは住宅ローンの話題ですね。
そして金利上昇は、もちろん企業にも影響があります。お金を借りて人を増やし、設備に投資して伸びていく。超低金利の時代には出来ていたやり方が、少しずつ重くなっていきます。
そんな中で考えてみたいのが、中小企業の経営でよく話題になる「年商1億円の壁」です。
順調に伸びていく会社がある一方で、ある規模まで来ると、足踏みしてしまう会社もあります。では、成長を止めているものは、何なのでしょうか。
「年商1億の壁」は、グレイナーの成長モデルとしても、経営の現場でよく耳にする言葉です。
しかし、創業から数年経ち、売上は勢いよく伸びたが、1億円の手前で止まる。
そんな話を、一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
先日、この壁をテーマにした『1億の壁を突破する「プロダクト選び」の極意』という動画を見ました。経営コンサルタントの椢原浩一先生と、弊社アステッキ代表の岩谷による対談です。
動画の中で、代表は創業期の話をしています。最初は自分の専門とは畑違いの分野で事業を始めましたが、やむなく撤退。改めて事業の軸に据えたのは、もともと経験があった医療分野でした。自分がよく知っている領域だからこそ、顧客が本当に困っていることが見えた、と語っています。
何を売るか。どの市場で戦うか。壁を越えていくには、まずその選択が欠かせない。動画を見て、改めてそう感じました。
そのうえで、経営学を研究する立場から、もう一つ考えてみたいことがあります。
良いプロダクトを選び、売上が伸び始めた会社は、その先でどんな課題に向き合うことになるのか。プロダクトとは別の、もう一つの側面です。
多くの会社で見られる、こんな一日を想像してみてください。
朝から、社員の「それ、社長に確認します」が何度も聞こえます。見積もりの金額も、お客様への返答も、新しく入った人の担当も、最後は社長が決めています。
社長の予定表は、打ち合わせでびっしり埋まっています。社長が外出していると、確認待ちの案件がたまっていく。社長が数日休むと、会社全体の動きがゆっくりになります。
そして当の社長は、こう思っています。「もっと任せたい。でも、任せられる人がいない」。
社員の側から見ると、少し違う景色かもしれません。「任されていないから、判断の経験が積めない」。
もしかすると、みなさんの会社でもよく見られる光景かもしれませんね。これは、どちらが悪いという話ではありません。創業者の判断力と行動力で伸びてきた会社ほど、自然とこうなっていくのだと思います。会社が小さいうちは、社長が全部を見て決めるのが、一番速くて確実だったからです。

この状態を、50年以上前に説明した研究があります。
ラリー・グレイナー先生が1972年にハーバード・ビジネス・レビューで発表した、組織の成長モデルです。グレイナー先生は、組織は一直線に大きくなるのではなく、成長する「進化」の時期と、行き詰まりを迎える「革命」の時期を、交互に繰り返しながら成長すると考えました。
最初の段階は、「創造性による成長」です。この時期に力を注ぐのは、プロダクトと市場をつくること。創業者は、つくることと売ることに全力を注ぎ、管理の仕事にはあまり関心がありません。社内のやりとりは頻繁で、形式ばったものではありません。顧客の反応を見て、すぐに動く。まさに創業期の会社の姿です。
つまり、この成長モデルでも、最初に問われるのはプロダクトです。何を売るかが定まらなければ、会社は成長の入口に立つことすらできません。
ところが、プロダクトが受け入れられ、会社が大きくなってくると、別の問題が顔を出します。人数が増えれば、気軽な会話だけでは組織が回らない。後から入った社員は、創業メンバーほどの熱量を持っているとは限らない。お金の管理にも、きちんとした仕組みが必要になる。創業者は、望んでもいなかった管理の仕事に追われるようになります。グレイナー先生は、これを「リーダーシップの危機」と呼びました。
その後も、組織は段階ごとに異なる危機を迎えるとされています。指示による成長のあとには自律性の危機が、権限委譲による成長のあとには統制の危機が来る、といった具合です。グレイナー先生は全部で5つの段階を示しています。
このモデルで私が面白いと思うのは、次の危機は、前の段階で成功した理由の中から生まれるという点です。
創業者が全部決めていたから、速く伸びた。そして、創業者が全部決めているから、それ以上伸びにくくなる。成功の理由と、行き詰まりの理由が同じなのです。
これは、少し恋愛とも似ていませんか?ひたむきに夢を追いかけている姿に惹かれて付き合い始めたのに、いざ結婚を考える段階になると、急にそこがマイナスポイントとして映り始める。相手が変わったわけではありません。変わったのは、二人が置かれたステージです。
もう一つ、今の時代に照らして興味深い指摘があります。グレイナー先生によれば、利益が楽に出ているときは、組織の危機は先送りされやすい。多少やり方に無理があっても、業績が良ければ、変える必要を感じにくいからです。反対に、市場の環境が厳しくなると、危機はより深刻で、解決しにくいものになるとされています。
超低金利の時代は、お金を借りて人を増やし、勢いで伸びていくことができました。組織の課題があっても、資金で先送りできた面があったのかもしれません。金利のある世界では、その余裕が少しずつなくなっていきます。隠れていた組織の課題が、表に出やすくなるということかもしれません。
そう考えると、「1億の壁」の見え方が少し変わってきます。
私たちは壁にぶつかると、まず外に目を向けます。市場は伸びているか。競合はどう動いているか。プロダクトは顧客に合っているか。どれも欠かせない問いです。
グレイナー先生は論文の冒頭で、多くの会社は外の環境や将来ばかりに目を向けます。
さらに、まるで市場予測の精度を上げれば答えが見つかるかのように考えてしまう、と指摘しています。
また、組織の行く末は外の力よりも、その組織自身の歴史に左右されると述べています。
外を見ることをやめる必要はありません。ただ、同じくらい、中にも目を向ける必要がある。しかも中の壁は、これまで会社を伸ばしてきた強みと、同じ場所にあることが多いのです。
ちなみに、グレイナー先生のモデルは、「売上がいくらになったら危機が来る」という金額を示しているわけではありません。危機が来るタイミングは、業界の成長の速さなどによって異なるとされています。「1億の壁」と結びつけて考えているのは、あくまで私の解釈です。
大切なのは、1億円という金額そのものではないのだと思います。創業者一人ですべてを把握し、判断するやり方では回らなくなってきたかどうか。「1億の壁」と呼ばれているものの正体は、その境目なのかもしれません。
では、この壁の手前にいる会社は、どうすればいいのでしょうか。さらに、先ほどの例に戻ってみます。
朝から何度も聞こえていた「それ、社長に確認します」。その中身をよく見ると、大きく二種類の判断に分けられます。
一つは、お客様にどう応えるか、何をつくるかといった、社長の経験や勘が生きる判断。もう一つは、見積もりの基準やお金の管理、業務の手順、社内の情報共有といった、本来は仕組みで回せるはずのものです。
グレイナー先生が、創業者が追われるようになると指摘したのは、後者の管理の仕事です。創業期には、社長がこれを「ついで」にこなしても回っていました。でも会社が大きくなると、この「ついで」が、少しずつ確認待ちの列をつくっていきます。
だから最初の一歩は、任せる相手を探すことではないのだと思います。社長に集まっている判断のうち、どれが管理の仕事なのかを見分けること。そして、それを担う人や仕組みを置くことです。
そのとき一番難しいのは、社長自身が手放すことかもしれません。グレイナー先生は、創業者は管理の仕事に向いていなくても、なかなかその座を譲りたがらないと指摘しています。自分で決めてきたからこそ、ここまで伸びてきた。その自負があるほど、手放すのは怖いものです。壁を越えるために一番変わる必要があるのは、もしかすると社長自身の役割なのかもしれません。

金利のある世界では、資金的な余裕だけで組織の課題を覆い隠すことは、以前より難しくなるかもしれません。裏を返せば、今は組織に目を向けるよい機会なのかもしれません。
最初に問われるのは、何を売るか。売れ始めたあとに問われるのは、誰がどう回すか。成長とは、うまくいっていたやり方を手放し続けることでもあるのでしょう。
もちろん、あえて大きくならない道もあります。大きくなるだけが正解ではありません。グレイナー先生も、小さな会社ならではの気軽なやり方は、会社の小ささがあってこそ成り立つとして、成長しないという選択に触れています。どこまで大きくなるかも、経営者が選べることの一つです。
良いプロダクトが会社を壁の前まで連れてきてくれたなら、その先へ進むきっかけは、社内の「それ、社長に確認します」が一つ減ることなのかもしれません。
『1億の壁を突破する「プロダクト選び」の極意|起業で失敗しない3つの判断基準とは?』
Greiner, L. E. (1972). Evolution and revolution as organizations grow. Harvard Business Review, 50(4), 37–46.
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